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特集「贈る」

特集「贈る」

2024 SUMMER
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内容

小さい頃、母の喜ぶ顔が見たくて道端に咲く花を摘んだ。

それから、渡し、受け取りを繰り返し、

大人になってプレゼントの意味は少し変わった気がする。

なぜ人は贈るのだろう。
思い出づくり?義務感?礼儀?もしかしたら自己満足かもしれない。
流行りや映り、関係の値踏みばかりにこだわって、選ぶ行為に終始して、
形だけのプレゼントに満足している自分がいた。

目の前の人に、どれだけ喜んでもらえるか。
ただそれだけの事にドキドキしていた気持ちを、もう一度思い出せないだろうか。

人を想って贈ることとはなんだろう。
その人らしいものを渡すことではない。きっと、言葉にできない溢れるような想いを、形あるものに託して伝えることだ。
(迷う合間に、気づけば相手との静かな対話が始まっている。
忘れられない記憶と、思い出すたびに揺れ動く感情。埋もれていた思い出の断片を一つずつ拾い集めるうちに、導き出されるひとつの答え!)

結局のところ、贈るという行為は日々の答え合わせなのかもしれない。
相手への理解が正しいのか、この贈り物を通して確かめようとしている。
しかし、これはただの正解探しではない。今を示す里程標だ。
そして、いつまでも完璧な贈り物なんてできない。プレゼントが届けてくれるのは、チグハグかもしれないけれど、紛れもなく特別な温もり。
口では言い表せないけれど、確かにここに存在する、大切な人への想いの結実なんだ。

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